小山 節子(ソプラノ)
モーツァルト記念合唱団に入団して以来、私の生活はとっても充実しています。
以前は、クラシック音楽を聴くことはありましたが、歌うことなどは想像もつきませんでした。音楽を聴いてインスピレーションを受けることはこれまでもあり、絵を描いたり、朗読をするうえで大いに助かりました。でも、歌うことによってこんなに楽しく夢中になるなんて思いも寄りませんでした。
( 写真:ソプラノソリストの中江早希さんと踊る筆者)
結婚後、主人の転勤先の福岡で私は子育ての傍ら絵本の楽しみ方をお母さん方と一緒に勉強するなかで子供向けの移動図書館を設立しました。
さらに福岡市に「こども児童館」を建てたいと要望し先進的な東京に視察に行ったりしましたが、主人が大阪、京都に転勤になったためこの件は後任に託しました。
京都では(住まいは嵐山近くの桂です)着物の染色のアルバイトをしながら大人の絵画教室を開きました。油絵を京都市立美術館に出展する中でいろいろな仲間ができました。その中には音楽家の方はいませんでした。ある画家のアトリエで、フレスコ画の手法を体験させて頂いたのは貴重な思い出です。
このような環境の中ではクラシック音楽を聴くことはあっても歌いたいとは一度も思いませんでした。
朗読を勉強する中で、壁にぶつかり悩んでいるとき、主人から「モーツァルト記念合唱団は、ヴォイス・トレーニングが充実しているから参考になるかも」との助言があり、練習には参加するが本番参加は自分で決める、との条件で入団を決めました。それは私の65歳、定年後の大チャレンジでした。「音楽の知識のない、ましてや音符は読めない、音は取れない」と自覚しての入団です。
練習場では、皆さんの声がよく聞こえ、録音し易い最前列で、恥ずかしがらずにレッスンを受けました。ヴォイス・トレーニングの時間には声を出し、パート練習と全体練習では口パクで・・、歌える箇所だけ小声で歌うという風に、歌っている人達に迷惑にならないようにしていました。でもこれでは練習にはなりません。家へ帰って録音を聞き、声を出して練習しました。
娘は「お母さんはよく歌の練習をするのに、なかなか上達しないわね」とあきれ顔で言っていました。私は「お父さんは音楽に恵まれた環境に育ち、小さいころから歌に親しんで来たんだから歌えるんでしょ。お父さんが音楽に接した時間を足したら、お母さんが毎日2時間練習したって足りないのよ。若い時と違って吸収力も落ちる歳よ。だから練習するのよ!」と反論し、自分を励ましてきました。未だ十分には歌えてはいませんが、いつかソロの箇所を歌えたらどんなに嬉しいかと、欲を出しています。
また、ささやかなプランとして、親しい人たちを交えたファミリー・コンサートを考えております。歌あり、絵あり、朗読あり、踊りあり、料理あり、みたいな、なんでもありのパーティーです。私の魂が地上を離れ、宇宙遊泳する前には実現したいと思っています。
そして今、モーツァルト記念合唱団の素晴らしさを改めて感じています。
まずとにかく、先生方のご指導と人柄が素晴らしいです。
指揮者の津田先生は「ソプラノさん!前は70代の声だったけど、20代の声になってますよ。歌への情熱はプロにも勝りますね」と励まして下さいます。
また小話も楽しみです。歌うにあたり、作曲家のエピソード、時代背景、テレビや映画、演奏家の話・・、はたまたジェスチャー付きの曲のイメージ作り、言葉の表現のユニークさ等、いろんな角度から私たちに分かり易く説明してくださいます。
私は津田先生の小話が新鮮で楽しいので、それを支えに少しでも曲の世界に入れるよう四苦八苦して練習しています。これが津田マジックです。いつの間にか楽しみが倍増しているのです。
また最近、私の娘同様の年齢の団員と一緒に歌える幸せを感じています。そしてプロの声楽家と一緒に練習できるのも更なる楽しみです。
私にとって歌の世界は、他では体験できない魅力があります。ですからヒールの高い靴を履き、2時間立ちながら長時間歌い続けられるよう、体力作りにも励んでいます。
なお今般、津田先生のご指導で「第九」の演奏会のお話を頂き、早速入団手続きをしました。「第九」は未経験なので苦労しそうですが、とても楽しみにしています。
<追伸>
MMCに入団して豊かな人生を送っています。歌う友がいて、笑って元気で、感謝して、健康で過ごせて、なんて幸せなんでしょう。
私の中には、糸がもつれているような引き出しがいっぱいです。ですから今は、歩んできた時間を振り返り、そのもつれた引き出しを整理中なんです。
少し大げさですが、人を愛し、自分を愛し、地球を愛し、苦労を惜しまず・・・、でも時々、創造の世界に浸って報われたい自分がそこにいます。
夢に向かって、夢食材のお料理をお腹いっぱい頂き、今は本当に充実しています。
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