今回は、第九のバスに参加予定の池田氏のエッセイをご紹介します。
現在クラウドファンディング事務局では、モーツァルト記念合唱団の団員でイラストレーターの、池田憲昭さんのご了解を頂き、今までに描かれた作品の中から5つの作品を選んで「絵はがき」を制作しています。「絵はがき」はクラウドファンディングの返礼品として現在準備中です。
このたび池田さんから、その作品の1つについて貴重なエッセイを頂きましたので、ここにご紹介させて頂きます。是非お読みください。
なお池田さんは現在、視力を失っておられます。
「学校の音楽室」
モーツァルト記念合唱団バス団員 池田憲昭
クラウドファンディングの返礼品として、津田先生と奥様に5枚の絵を選んで頂きました。「学校の音楽室」はその内の1枚です。水彩絵具でイラストを描き始めた頃の作品で、私自身はこの絵を殆ど忘れかけていました。
この音楽室は木造の校舎で、本舎とは離れて建てられていました。防音性に劣る木造建築では、その必要があったのでしょう。音楽の時間になると、楽しく賑やかな教室ですが、それ以外の時間では静かに閉ざされた建物でした。イラストは、音楽室の窓の外で、中から聞こえてくる音楽に耳を傾ける子供と犬を描いています。彼らは外で音楽を聞いているだけで、満ち足りた時間を過ごしているのでしょう。
社会人になって15年も経った頃に、ようやく合唱を始めて、私はふたたび音楽室に入ることになりました。そして私と音楽との関わりは、全く異なったものになりました。私は長じて、バッハを中心としたドイツ・オーストリア系の音楽を好んで聞いていましたが、この絵の子供や犬と同様に、それは聴くものであり、当時の私は、自ら演奏する事などは考えも及ばなかったのです。それは意外と神聖なものではなかったり、人間関係がややこしかったりもしましたが、明らかに、私の人生を豊かなものにしてくれました。
今では、あくせくと、歌詞を覚えたりして、音楽は美しいだけの存在では無いようですが、静かな時を感じるとき、また、どこからか音楽が聞こえてくるように感じるとき、私は、あの木造の音楽室が、今でも心の中にあるのを感じるのです。
以上が池田さんのエッセイです。池田さん、ありがとうございました。
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